今日も南東の空には大きな積乱雲が見えています。
暑いのは大の苦手ですが、ベランダから見えるこの景色は好き。
8月も半ばを過ぎましたね。
お盆には大きな台風が日本列島を縦断し、これから少しづつ涼しくなっていくきっかけになるのか、それとも例年通りに厳しい残暑がやってくるのか。
夏が苦手なわたしも、海に、お祭りに、妻と子どもたちを連れて夏らしいことを満喫しました。今こうして夏が終わりに向かっていくことに、一抹の寂しさも感じています。
少し時間を巻き戻しましょう。
約3週間前の、それは7月の終わりのこと。
妻と子どもが何やら面白そうなものを買ってきました。
何かの実験をするキットのようです。
クリスタルを育てるキット「クリスタルガーデン」
それがこれ。
10日~20日かけてクリスタルを育てるんですって。
面白そうなので記録させてもらうことにしました。
左下の袋がクリスタルパウダーで、こいつを専用容器に入れた熱湯に溶かし、その中に土台を入れ、上からクリスタルの種をまくらしい。
外箱で原材料を確認してみると、クリスタルパウダーもクリスタルの種も同じく「リン酸アンモニウム」でした。
つまりはリン酸アンモニウムの溶液に核となるリン酸アンモニウムの粒を沈め、リン酸アンモニウムの「結晶( = Crystal)」を育ててみよう、ということみたいですね。
早速、子どもと一緒に作業開始です。
専用容器に既定の量まで熱湯を入れ、すかさずクリスタルパウダーを入れてよく混ぜ、土台の石灰を沈め、その上から種をまきました。
全っっっ然中身が見えん。
説明書によれば「種は出来るだけ真ん中にまくべし」とのことだったので、子ども達なりに頑張ってはいましたが、青が濃すぎてどうなったのか確認することができません。
実はこの後、日を追って変化を記録していこうと思っていたのですが、このディープブルーのせいで、肉眼ではわずかに見えるものの画像上ではほとんど変化をお伝えすることができず、あえなく断念。
結局何もできずに出来上がりの日を迎えてしまったのであった。
クリスタル、おそらく完成。
そんなこんなで夏休みじゅう居間の隅っこに置いてあったクリスタル。
ディープブルーからわずかに覗く変化を親子ともども毎日楽しみに観察してきましたが、数日前辺りから結晶が溶液より上に伸びてきており、しばらくそのまま放置していました。
今一度説明書を読んでみると「クリスタルの結晶が水面に近づいてきたら完成の目安」とのこと。
あらら、じゃあこれもう出来てるんだねぇ~などと家族で顔を見合わせつつ、水溶液から取り出してみることに。
向かって左がお兄ちゃんので、右が弟くんのです。
水溶液を捨てるところまでは簡単だった反面、容器からブツを取り出す際には相当苦労しました。
結晶が土台に下にまでみっちりと張り付いており、全然取れないのです。容器を大人の力でギチギチと変形させつつなんとか剥がしたのですが、その際、哀れ何本かのクリスタルが犠牲に。
出来上がったクリスタルをしみじみ眺めてみると…その、なんていうか…独特な風貌だと思いませんか。
とりあえず箱絵と全然違う姿なのは間違いない。どちらもヒョローっと細長くて、先端は容器の壁で阻まれ不自然な面を形成。ううむ…。正直に言って、それほど美しいとは言い難いような。
…いや、だがしかし、これをそれっぽく総評することで芸術に昇華できないだろうか?
ものは試しだ。やってみよう。
クリスタル論評
わたくし町田はクリスタルの中でも、特にリン酸アンモニウム製クリスタルの専門家であります。今回、特に質のいいクリスタルを2つ、独自のルートから入手することができましたので、簡単に論評いたします。
ふじ壺の乗りが上品で繊細。中心は天を衝くひまわりの如く。
外周は扇状にのびのびと、大空を抱くように伸び、対して中心は天を衝くひまわりのごとく起立している。いわゆる「中立ちの構え」であります。
中立ちの頂点を飾る苔上の結晶体を、我々専門家は「ふじ壺」と呼び、その様子に注目をしますが、この付き方が実に美しい。先端の勇ましく肥大した部分を鼓舞するかの様に、しかし控えめに、適度な乗りでございます。
中立ちの構えの中でも、特に出来のいい逸品だと言っていいでしょう。
総合点数:85点
力強い茎にすがすがしさすら覚える。貴重な「折れススキ」を見よ。
こちらも外周は非常に優雅に伸びておりますが、先ほどに比べると中が無い。「中抜け大扇」の代表的な型でございます。
特筆すべきは一本一本の茎が実にたくましく、その直線的な伸びにはすがすがしさすら覚えるほど。これほど力強い中抜け大扇は滅多に拝見できるものではございません。
欲を言えば、茎の数の充実が今一歩か。ふじ壺の乗りもどこか侘しい。
ここまでの総合得点はざっと見積もって「69点」といったところです。
しかし、こちらの画像をぜひご覧いただきたい。
この一閃は、実は先のクリスタルの中心部分から折れ取れたものでございます。つまり、この一閃が折れ取れたからこそ中抜け大扇の型を成した、と言えるのです。
こういった例においては件の一閃を「折れススキ」と呼び、大変に珍重され、鑑定に際しても加点の対象となるのです。
芳醇に咲くふじ壺をごらんなさい。絶品なり。
総合点数:30069点
以上。
うむ…こうしてみると少し芸術的に見えてくるような…いや、やっぱり全然見えないわ。
なかなか手軽で面白い実験キットでした。思い通りにならなかったのもまた一興。機会があったらまた作ってみたいですね。
みなさんも、お子さんと一緒にぜひ。遊んでみてください。