喉が少し痛む日が数日あった。
こんな世相なので、本格的な風邪に移行してもらっては困る。身体を冷やさぬよう靴下を二重に履き、首回りにはネックウォーマーを装着、さらにいつもより一枚多く着込んで過ごしていると、みるみるうちに軽快していった。
そろそろ家の中ではマスクをしなくてもいいだろうか…などと夢現に寝入ったその翌日、目覚めてみると何かがおかしい。寝ぼけ眼のまま少しづつ状況を掴み取っていく。…痛み。うん、この不快さは痛みだ。顔の痛み。段々意識がはっきりしてきた…これは…頬の痛み。
そうか。またやっちまったんだな。
恐怖!副鼻腔炎は突然に
頬や目の奥を中心として上顎の奥歯にまで及ぶ強烈な痛みで、脳がボーっと痺れている。頭を動かすと上顎洞に溜まった膿が揺れ、それに合わせて痛みも揺れる。喉の奥を後鼻漏が垂れていくのがわかる。
はい、またしても急性副鼻腔炎です。乙!
もう何回目なんだろう。ここまで強烈な痛みを伴うものは恐らくまだ片手で数えらえる範囲だろうと思うが、細かい不調ならばもう数えきれない。もはや「慢性」と呼んでも差支えはあるまい。どちらにしろ自力でどうにかなるレベルの病状では無いので、さっさと診療所に出向いて薬を出してもらってきた。
痛みと日常の狭間で
こうなると最も顕著に失われてしまうのが集中力だ。
なにしろ痛みと不快さが一日中つづくわけだから、当然それ以外のことに考えが至らなくなってくる。部屋を移動しては何をしようと考えていたのかを忘れ、パソコンの前で同じ作業について何度もミスをし、気を紛らわすため意味もなく立ったり座ったりして。
だからといって何もしないと余計に痛みに囚われてしまう。なので、より一層と鈍くなった頭を無理やり回転させ、出来るだけ普段通りに過ごそうと試みるわけだ。そうして痛みに支配されてしまった思考を、半ば強引なメンタルで日常に寄せていく。仕事をし、家事をし、子どもたちの面倒を看る。そして当然、酒も呑む。
今日の晩酌
この記事を書いている現在は、発症してから四日目になる。徐々に快方に向かっているような気もするが…その進捗は極めて牛歩だ。まあいい、呑もう。一応書いておくが薬の中にはお酒と一緒に飲んではいけないものもあるので、真似をしないように。
ピーマンの焼き浸し
「焼き浸し」なんて料理名があるのかどうか知らないが、要するに炒りつけたピーマンをカツオ出汁ベースのタレに漬けたもの。カツオ出汁、しょう油、酒、みりん、鷹の爪。隠し味としてほんの少量だけ酢を加えた。
ピーマンから水分が出るとぼやけた味になってしまうので、よく焼いてしんなりさせてある。上品な味わいで旨い。
ビンチョウマグロのヅケ
サービス品として売られていた、ビンチョウマグロの端材。同量のしょう油、みりん、酒で漬けた。安い刺身はヅケにするに限る。歯触りはネットリとして心地よい。
ちなみに、徳利には日本酒ではなく燗をつけた麦焼酎が入っている。ああして湯を張った器に入れておくと冷めにくいのでそうしているが、なんとも見た目が悪い。
そして、晩酌をしていると本が読みたくなる。
支配人のリヴィエールは部下のミスについて罰を与える時、あくまで個々人を罰しているのではなく、その人を通して裏側に暗澹と拡がる瑕疵や過ちを罰しているという。だから非常に厳格である必要があるのだ、と。
人の良いベテランの職工が犯した一度のミスのため、あっさりと職を追われる場面があった。そういった手法で会社全体の空気を律するというのもわかる。…が、なんだかねぇ。
まだ読了していないことをお断りした上で、今のところ「吞み友達にはなりたくないな」というのが本音だ。
回復を夢見て
体調を崩して始めて健康であることの幸せを知る、というのは非常によくあるパターンだが、今のわたしが正にそれだろう。
比較的天気のよかった今日、ベランダに布団を干していると、吹いてくる風に乾いた冬の香りがした(匂いはまだ感じられるのが救いだ)。これで痛みや不調が無ければさぞ気持ちのいいことだろうなぁ…と想像し、早くそうなることを今は一番の楽しみとして毎日を過ごしている。本っ当にさぁ…なんでこんな膿が溜まって抜けていかないような穴が顔にいくつもついてんのよ。神様ミスってんぞコレ。
このように、わたしの師走は最悪のスタートを切ったが、皆さまはどうだったろうか。12月に入ったら少しづつ大掃除を進めていこうと思っていたのに、これでは窓ふきの真似事もできない。予定が大幅に狂ってしまった。
これからより一層寒くなるはずなので、お互い体調には気をつけて過ごしていこう。