11月のとある日。
旅行の予定を週末に控えていたわたしは、その週の頭から我が家に蔓延り始めた悪魔「インフルエンザA型」の脅威に戦慄していた。
旅行の計画をたて始めたのは今年の4月。大事なメンバーでの特別な旅行だったから、早め早めに計画を立て、それぞれ忙しい生活の合間を縫うように慎重に日取りを決めた。そもそも「旅行に行きたい」と言い出したのも「行先は金沢がいい」と提案したのも誰あろうこのわたしである。当然インフルにかかってしまえば即辞退確定なので、ここはなんとしても回避しなくてはならない。
そんな使命感の中、藁にも縋る気持ちで、ネットで調べた「自費で抗インフルエンザ薬を処方してもらい予防として服用する」というパワープレイを試してみることに決めたのが出発日の2日前だった。
事前に抗インフルエンザ薬を服用することで発症を予防することができる
お忙しい方のために結果だけ先にまとめておこう。
前提となるわたしの状態だが、服用を開始した時点で家族の半数がインフルエンザを発症していた状況を鑑みると、恐らく感染はしているが発症はしていないという段階であったと思われる。
使用した抗インフルエンザ薬は「リレンザ」だ。
5mgが20ブリスター。予防薬として使用する場合は1日1回(1回につき2吸入)せよとのお達したっだので、10日分ということになる。予防となると保険は適用されず、診察、リレンザ代とも自費となり、併せて8,000円程度の出費だった。
以上を踏まえた結論としては、あくまで「わたしの場合」とお断りした上で、しっかりとインフルエンザの発症を予防することができたのである。のどの痛み、鼻の調子など「これは怪しいかな?」と感じる瞬間もあったにはあったのだが、最後まで本格的に発症することは無かった。ありがとうリレンザ。
そんなわけなので、種々の事情で「今回だけは絶対にかかりたくない!」という時にはぜひ選択肢の一つに加えてみてもいいかもしれない。もちろん自己責任でね。
どうでもいい補足
現在わたしの住む地域ではインフルエンザが大流行している。なので例えばその時間、医療機関が少しでも混みあっていたり、もしくは抗インフルエンザ薬が必要な方に届かなくなるほどショートしていたり、そういったネガティブな事情が無いことを医療機関に電話確認した上で、今回の作戦を行った。残念ながら一筆書いておかないと悪い方に捉えてしまう方がおられる昨今なので、一応。
ツイてない一年の集大成?
そもそも我が家ではその一週間前からお腹の風邪が流行っていた。
ようやくその風邪が収束し一息ついたのも束の間、再び一人が発熱。一気に高熱となり、これはさすがに変だぞと検査した結果インフルエンザA型でしたオメデトウゴザイマスというわけだ。
「風邪2連チャン」ということ自体が相当ツイていないのに何故かすんなりと受け入れてしまっているのは、今年は頭からず~っとこんな感じで過ごしてきたからに他ならない。大袈裟ではなくリアルに、何事もなく終えた1ヶ月というのは一度も無かったのではなかろうか。みんな仲良く順番に体調を崩し、最後まで回ったらまた始めから新しい風邪を回していく。そんな悪夢の一年の集大成として今回のインフルがやってきたように思う。
いずれにしろそんな経過で始まったインフルだったから、偶然にもその当初からしっかりとマスクなどの感染予防はしており、コロナの時のような気づいた時には既にみんな感染していたという情けない状況だけは回避できていたこの時点では、「もしかしたらこれ以上蔓延することなく終えられるのでは」という一縷の望みが少なくともまだ、あった。
結局はダメだったんだけどね♡
王者インフルに蹂躙されていく悲しき平民たち
今まで書いてきた状況はさておいて、一番辛いのは患った本人なのは間違いないわけで。
40℃を超える熱と、喉の痛みが数日続き、あっという間に体力は低下、意識は混濁、元気は消失。今年かかった風邪の中でも断トツに辛そうな様子を見て、あらためてインフル王の威厳を思い知らされた。
わたしも忙しい仕事の合間を縫って出来る限りの看病をし、アルコールスプレー片手に感染予防に立ち回り、いつもと変わらず家事もこなし、目の回るような忙しさのなか我ながらよく頑張ったと思う。だからきっと大丈夫だろうと、週末の旅行には行けるだろうと信じていた。
そんな頑張りが実って1人目の熱が下がり、それから2日が経過。
これで普通の日々が戻ってきそうだねよかったよかった一安心というところで2人目が発熱したのである。
無敵の2歳児に気をつけろ
発熱したのは今年2歳になったばかりの我が家のアイドル。
熱が出た瞬間にインフルだろうとはわかっていたので、即検査を受けて(もちろんインフルA型だった)タミフルをゲットしたことが功を奏してか、非常に元気な病人となった。
2歳児に関わったことのない諸氏にはピンと来ないかもしれないが、彼らはマスクをしたまま生活などできない。そして好き放題せき込み、可愛すぎる満面の笑みを浮かべ抱っこをせがんでくるが、その手のひらはインフルが満載された涎でベトベトになっているのだ。まさに人間凶器!
抱き上げるとギュッ…とわたしの首筋に涎まみれの手でしがみ付き(すっごい可愛い)、そして横っ面にゴホンゴホンとせき込まれながら「これは自費の予防をやるしかないか」とにわかに心を決めたのであった。
今日の晩酌
では、そろそろ呑もう。
そこからの展開は早い。
予防するからにはスピードが肝心であろうとすぐ行きつけのクリニックに電話相談し、速やかにリレンザを入手。帰宅後すぐに一回目の吸引をした。抗インフルエンザ薬には他にも種類がある中でリレンザにしたのは「予防という意味ではリレンザが一番おすすめです」とのドクターの言葉があったから。結果的に発症を防げたわけで、ドクター様々なのである。
甘鯛の塩焼き
長くブログを書いていると段々ネタも尽きてこようという中で、恐らくアマダイは前にも紹介したことがあったんじゃないかなぁ。ま、いっか。
鯛と名は付くが鯛の仲間でないことは食べてみればすぐわかる。しっとりとした身にはたんぱくでクセのない旨味があり、万人受けする魚ではなかろうか。全体的な味わいは石もちとよく似ている。あと顔がめっちゃかわいいので売り場で見かけたらぜひ調理前の顔を観察してあげて欲しい。
晩酌のおとも デイヴィッドハンドラー著のミステリ
前回の晩酌記事から半年以上が経過し、その間、相も変わらずたくさんの本を読んだ。
特に面白かった本という意味ではウィリアム・ギブスンの「ニューロマンサー」や「カウント・ゼロ」などを挙げたいが、この辺りはもうわたしより遥かに造形の深い読書家の皆さんによって書評され尽くされているだろうから、わたしからは何も書くことが無い。
というわけで、わたしが今回紹介したいのはこの本だ。
デイヴィッドハンドラーさんという人が書いたミステリ。これ以外にも数冊所持しているのだが何故か見当たらなくなってしまった。違う本棚に仕舞ったのかしら。
いつも通り古本屋で適当に買った本なので、デイヴィッドハンドラーさんがどういったネームバリューの人なのかは全く知らない。知らないんだけど…なんていうかこれがまた、すっごい箸にも棒にかからないようなミステリなんだな…っていうと棘があるか。待ってくれ決してディスっているわけじゃないんだえ~と、アメリカ版の火サスみたいというか。いや、こんな書き方だと誤解を生みかねない、落ち着け。落ち着いてちゃんとした感想を書くとするなら、
「あぁ、アメリカにもこういう箸にも棒にもかからない火曜サスペンスみたいな内容の本って売られているんだな。」
って思った。
ディスってはいません。
元売れっ子作家のスチュアート・ホーグ。才能あふれる作家だった彼は、とある挫折をきっかけに一線を退き、それでもその文才を活かしゴーストライターとして陰日向に活躍する中で、様々な事件に巻き込まれながらもそれを解決していく、というのがシリーズの根幹をなすストーリー。
ミステリというジャンル自体にそもそもそういった要素が含まれているのだ、と言われればそうなのかもしれないが、ゴシップ好きが食いつきそうな撒き餌が各所に散りばめられていたり、ポイントポイントで色恋っぽい展開が待っていたり、服装や食べ物がやたら細かく描写されていたり、とにかく全体的にそれっぽい造りなんだなこれが。で、そのそれっぽい造りがとても魅力的なの。
いい意味でテレビドラマのような手軽さがあるからこそスキマ時間にサッと読めて、かつ、ちゃんと楽しめる。これぞペーパーバックの醍醐味じゃないかといった趣がこの本にはある。わたしはどうも含蓄のありそうな重めの本を無意識に手に取ってしまう傾向にあるのだが、含蓄があって重けりゃいいってもんでも無いよなぁとしみじみ感じてしまった。
とはいえわたしの個人的な好みとしてはやっぱり、本家フィッツジェラルドの方に軍配は上がる。ここまで書いてきてなんだがそれはもう圧倒的完勝だ。グレートギャツビーだって何度も読み返しているし、好きなモンはしょうがないんだ。でも、今後は食べず嫌いをせず色んな本を読んでみようと思わせてくれた本でしたとさ。めでたしめでたし。
人生諦めが肝心
旅行の前日、気管支がリレンザコーティングされているわたしは相変わらずの無症状で、しかし我が家のインフル患者はさらにもう一人増えているという状況だった。
で、これ基本に立ち返ってよく考えるとさぁ。
そもそも自分が無症状だからって旅行に行っても大丈夫だっていうことにはならないよね?っていうことにその時になって気が付いてしまって。一緒の車に乗って、一緒に旅をするわけだから。インフル地獄から「いやぁ大変だったよ!自分はうつらなかったけどねエヘ」なんてノコノコとやってきて、旅行中どんなにしっかりとマスクを付けていたとしても、絶っっっ対に気にさせてしまうだろう。そうすれば楽しい旅行が台無しだ。
「気にせず来なよ!」と言ってくれる愛しい仲間たちに平謝りし、その日のうちに人数変更の電話をかけ、わたしは無事キャンセルとなった。
同じ日の午後。すっかり肩の荷が下りた私がぼんやりとお皿を洗っていると、手の甲にピリッとした痛みが。この一週間というものどんなに真剣に手洗いうがいをしてきたか。赤切れになった手をさすりながら、頑張った自分がどこか愛しく思えて少しだけクスっとした。その直後、春先からずっと楽しみにしていた気持ちがまるで走馬灯のように(大袈裟)一挙に駆け巡り、ポロリとしてしまったのは内緒だ。
後日談
旅行メンバーの一人であった我が弟に話を聞いてみたところ、予定通りにいかないこともあったようだが、それでもとても思い出深い旅になったらしい。そのことだけでわたしとしては心から大満足!行かなくてよかった、というのは強がりかもしれないが、選択としては正解だったと素直に思える。
我が家のメンバーもすっかりインフルエンザから回復し、先日から穏やかな日常が戻ってきた。終わり良ければ全てよし!今年も残すは一ヶ月とちょっとなんだから、平穏に過ごせるよう神頼みでもするとしよう。
アルコール消毒オヤジに愛を込めて
時はコロナ前。
今は亡き父に飲みに誘われ、風邪気味で断ろうとしたところ「そんなの大丈夫大丈夫!アルコール消毒だよ!」などと笑われたのはいつの日だったか。結局その一言で連れ出された。もちろん風邪は悪化した。
風邪気味だけどカラオケどうしよう? そんなの気にすんなよ来いよつまんねぇだろ 熱もちょっとあるかもなぁ 面倒だなとにかく一旦来いよ! 了解それじゃ行くよ~歌おうぜ~!ゴホゴホ ウェイウェイ!!ゴホゴホ みたいなノリ、自分の周りだけじゃなくテレビなんかでも普通にあったよね?ね?なんだか悪い夢を見てるみたいだ。
昔の方が良いと言いたいわけでもなく、アルコール消毒など決してされないことも良く知っているわけだが、ふと思い返してみるとコロナ前後での常識の変わり方には舌を巻かずにいられない。同じ国の数年前の様子とは信じ難いものがある。今でもいるのかなぁ「アルコール消毒」とか息まいているオヤジさん。
なよった陰キャタイプであるわたしは、そんなアルコール消毒オヤジの男らしさにどうしても憧れてしまう部分がある。こういう先輩に連れまわされるの意外と好きだったんよな。
今やすっかり世間から疎まれているタイプのオヤジではあるが、こんな昔話にしか登場しない存在なのだから、もはや彼らの方が圧倒的マイノリティーであることは間違いない。運よく見つけることができたらぜひ優しく接してあげて欲しい。お礼に打ち出の小づちをくれるかもしれないぞ。
なんだかよくわからん締めになってしまったが、晩酌記事としてはそれもよかろう。
また次回。